代表理事 

日本赤十字社医療センター 腎臓内科部長 

石橋 由孝

当財団は、「慢性腎不全の予防・進展阻止、末期腎不全医療全般にかかわる教育や研究への助成」を主目的として、2013年4月1日公益財団に認可されました。

1950年代以降の生物医学の技術進歩と医療保険制度の整備により、日本では末期腎不全に至った後も「腹膜透析・血液透析・腹膜透析と血液透析の併用療法・腎臓移植」のいずれかを選択するあるいは相互移行することにより患者の長期生存が可能となりました。昭和の半ばまで、死の病いであった末期腎不全が、慢性疾患となりました。死から生への転換です。そのため診療では、個々の患者及び支援者の方の満足度を高めることがより一層重要な課題となりました。

このような背景のなかで、2020年6月に、私石橋由孝が当財団の代表理事を拝命いたしました。もともと当財団は、生涯腎不全で苦しめられた故・石橋由紀子が仕事での成功を社会に還元したいと考え、故・仙谷由人の支援を受けて立ち上げられました。腎不全やその進展阻止を目的とした生物医学的研究への支援に思い至ったのは必然と思われました。

長年腎臓内科の診療に携わっている医師としての私の経験をふまえて、今後の財団の方針として、過去の学知や伝統をふまえながらこれらの科学技術の進歩とむすびつけ将来につながる価値創造が必要であろうと考えております。すなわち、既存の腎不全の枠組みを超えた超域研究への支援です。そもそも、慢性腎臓病のグレード分類では、ハイリスク群を含めて考えるとすべての人が対象であり、財団の支援対象は、腎疾患・腎不全医療に限定する必要はないと私は考えております。死を通じて生をより深く省察することも可能となり、理科・文科の垣根を超えて死生学を取り入れるなど、柔軟な思考が必要になってくると考えております。

本財団ではこうした趣旨をふまえ、医学生や若手医師、メディカルスタッフ、および医療以外の人文科学・社会科学も含めた超域分野の方からの応募も歓迎したいと思います。賛同される皆様の変わらぬご支援とご協力を賜れますと大変幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。